四季がわかりにくくなってきた現代、暦のひとつである二十四節気七十二候で表現された自然観察を参考にして、日々の暮らしの中でもっと季節を味わってみませんか?
寒さの残る春の訪れから着実に歩みを進め、お花見や爛漫たる景色が、繊細に記されています。いにしえから繋がる人々の感性に触れ、何を感じるでしょうか。
※例年の目安とともに、2026年の日程は赤字でお示ししています。
日本の春はいつ?主な3つの定義と期間

日本の春の期間には明確な定義というものはなく、概ね以下の3つが代表的なものとされています。
- 気象庁: 3月〜5月
- 天文学: 春分(3月20日頃)〜夏至の前日(6月20日頃)
- 二十四節気: 立春(2月4日頃)〜立夏の前日(5月4日頃)
なお、天気予報の放送における春も、原則として気象庁の区分に合わせているそうです。
二十四節気の春「立春~穀雨」の七十二候(景色・風物詩)

| ・二十四節気は、太陽の動きをもとに季節の変化を示した指標で、1年を春夏秋冬4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けて季節の節目を表したものです。
二十四節気は期間を表す場合もあり、その際は次の節気の前日まで約15日間の期間を表します。 ・七十二候は、二十四節気の各節気(約15日)をさらにそれぞれ約5日間ずつ3つ(初候・次候・末候)に分けて、72分割したものです(24×3)。 自然界における気象や動植物の変化をとらえて名付けられた詩的な表現に特徴があり、気候の移り変わりをより詳しく示しているといえるでしょう。 なお、二十四節気・七十二候の日付は太陽の動きに基づくため固定されたものではなく、国立天文台が毎年2月に発表する翌年の暦要項(れきようこう)に、国民の祝日などとともに掲載されます。 |
以下に、二十四節気の「春」として
第1節気「立春」~第6節気「穀雨」(夏至の前日)における、七十二候の第一候~第十八候の景色や風物詩などについて、お伝えしてまいります。
- 二十四節気は、1)~6)の番号で示します。
- 七十二候は、各節気内に初候・次候・末候の順で、第一~十八の番号で示します。
- いずれも毎年の目安の日程と共に、赤字は2026年の日程を示します。
※各節気および各候の年間一覧に関しましては、二十四節気七十二候とは?意味と2026年の日程とともにご紹介をご参照ください。
1)立春(りっしゅん)毎年2月4日〜18日頃

※2026年は2月4日~
立春は、大寒の最終日「節分」の翌日です。「春が立つ」として暦の上の春が始まる時期で、八節(はっせつ)※の1つとして重要な季節の節目を表します。
※八節:二十四節気の中の八つの季節の変わり目(立春・春分・立夏・夏至・立秋・秋分・立冬・冬至)。
二十四節気は、立春から節気がスタートするため第一節となり、七十二候もそのうちの始めの約5日間から第一候としてスタートします。
また、八十八夜・二百十日・二百二十日を数える起点に用いられ、茶摘みや農作物・台風時期などの節目にあたる「雑節」にも関係しています。
※「雑節」について詳しくは、雑節とは?9つすべてを2026年の日程とともにご紹介をご覧ください。
立春から春分頃に最初に吹く強い南寄りの風は、気象庁から発表される「春一番」と呼ばれます。
第一候 東風解凍(はるかぜこおりをとく)

初候:毎年2月4日頃~8日頃 2026年は2月4日~8日
意味:暖かい春風が凍った氷を解かす
暖かい春風が次々と吹くたびに寒気が緩み、凍った土や川・湖の氷を解かす時期です。
「東風(こち)」は春の季語で、冷たさは残るものの春を告げる風です。陰陽五行によると春は東を司るため、東風は春に吹く風の総称とされています。
第二候 黄鶯睍睆(うぐいすなく)
次候:毎年2月9日頃~13日頃 2026年は2月9日~13日
意味:山里でウグイスが美しい声でさえずり始める
春の訪れを告げる鶯(ウグイス)が山里で、良い鳴き声でさえずり始める時期です。
「睍睆(けんかん)」はよい鳴き声を表し、別名は「春告鳥(はるつげどり)」、初めて鳴くウグイスの声は「初音 (はつね)」と呼ばれます。
また、「梅に鶯」の人気モチーフですが、実際はメジロであることが多いとされています。
第三候 魚上氷(うおこおりをいずる)
末候:毎年2月14日頃~18日頃 2026年は2月14日~18日
意味:割れた氷の下から魚が飛び上がる
春風が届ける暖かさで水がぬるみ、川や湖などの薄くなった氷が割れて中から魚が飛び跳ねてくる時期です。
春の始めの氷を指す「薄氷(うすごおり・うすらい)」は春の季語です。各地で渓流釣りが解禁になる頃です。
2)雨水(うすい)毎年2月19日〜3月4日頃

※2026年は2月19日~
雪が雨に変わり、氷や雪が解けてせせらぎになり、農作業に取りかかる一つの目安の時期となります。周期的な気温の変化を繰り返すことが多くなります。
第四候 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)

初候:毎年2月19日頃~23日頃 2026年は2月19日~22日
意味:雨で大地が潤い始める
凍てついた雪は大地に溶け出し、雪から春の雨に変わり地面の土が潤い始める時期です。
「脉(しょう)」は「脈(みゃく)」の意味で、山筋が続いていく様子を表します。
雪解けでところどころに地面の土が見えている箇所は、「雪の暇ひま」と表現される春の季語です。
第五候 霞始靆(かすみはじめてたなびく)
次候:毎年2月24日頃~28日頃 2026年は2月23日~27日
意味:春霞がたなびき始める
大気中の細かな水滴や塵により、山々に春の霞がたなびき始めて、景色がぼやけて見える時期です。
霞は春の季語、春の霞んだ月は「朧月(おぼろづき)」と呼ばれます。
※霧・霞・朧などの違いにつきましては、雲・霧・靄(もや)・霞・朧の違いは何?気象予報用語はどれ?をご覧ください。
第六候 草木萠動(そうもくめばえいずる)

末候:毎年3月1日頃~4日頃 2026年は2月28日~3月4日
意味:草木が芽吹き始める
土の中や枝から草の芽が萌え出す時期です。
冬の寒さを越えて、春を待ちに待った生命の芽生えが感じられます。
3)啓蟄(けいちつ)毎年3月5日〜19日頃

※2026年は3月5日~
日照時間が徐々に長くなり地中の温度が上がり、土の中で冬ごもり(冬眠)していた虫をはじめとした生きものたちが目覚め、地上に這い出てくる頃です。
また「初雷(はつらい)」はこの頃になることが多く、冬眠中の生きものの目を覚まさせるため、「虫出しの雷(むしだしのかみなり)」、「蟄雷(ちつらい)」とも呼ばれ、春の季語でもあります。
第七候 蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)
初候:毎年3月5日頃~9日頃 2026年は3月5日~9日
意味:冬眠していた虫(生きもの)が土から出てくる
冬の間、土中にこもって冬眠していた虫などの生きものたちが目覚め、暖かい春の陽ざしを感じて戸を開くように地上に出てくる時期です。
冬眠していた虫とは、虫のみならず生きもの全般を指します。
また、第四十七候「蟄虫坏戸 (むしかくれてとをふさぐ)」 9月28日頃~10月2日頃と対をなす候です。
第八候 桃始笑(ももはじめてさく)

次候:毎年3月10日頃~14日頃 2026年は3月10日~14日
意味:桃の花が咲き始める
花が咲くことを「笑う」と表した、桃の花が咲き始める時期です。
「山笑う」は春の季語、現代の「桃の節句/上巳(じょうし)の節句」は3月3日、桃の花を供します。
第九候 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

末候:毎年3月15日頃~19日頃 2026年は3月15日~19日
意味:青虫が羽化して蝶になる
青虫が紋白蝶に姿を変えて飛び交い始める時期です。
「菜虫」とは菜っ葉を食べる蝶の幼虫、青虫を指します。菜の花も満開となる頃です。
4)春分(しゅんぶん)毎年3月20日〜4月3日頃

※2026年は3月20日~
国民の祝日「春分の日」、春のお彼岸の中日です。昼と夜の長さが同じになり、これより昼の時間が長くなっていくとともに、寒さも峠を越え春めいた季節となります。
卒業式シーズンでもありますね。
第十候 雀始巣(すずめはじめてすくう)
初候:毎年3月21日頃~25日頃 2026年は3月20日~25日
意味:雀(スズメ)が巣を作り始める
雀(スズメ)が繁殖期を迎え、巣作りを始める時期です。
日中の時間が長くなり、多くの鳥たちも繁殖期を迎えます。
第十一候 桜始開(さくらはじめてひらく)

中候:3月26日~30日頃 2026年は3月26日~30日
意味:桜の花が咲き始める
桜の花が咲く、春らしい時期です。
桜前線が北上し、お花見シーズン到来となります。
第十二候 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)
末候:3月31日頃~4月4日頃 2026年は3月31日~4月4日
意味:春の雷が鳴り始める
大気が不安定な春の季節に雷が鳴り始める時期です。
大陸からの寒冷前線が通過し積乱雲が発生しやすくなるため、「春雷(しゅんらい)」は恵みの雨を連れてきます。
雷は夏の季語ですが、初雷や春雷はすぐに止むことの多い春の季語です。
第四十六候「雷乃収声 (かみなりすなわちこえをおさむ)」9月22日頃~27日頃と対をなす候です。
5)清明(せいめい)毎年4月4日〜18日頃

※2026年は4月5日~
清明は「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」の略で、清々しい空気と明るい日の光を感じる時期です。さまざまな春の草花が咲き、生命の息吹を感じる頃でもあります。
沖縄では「清明祭(シーミー)」といわれる先祖供養と親族交流の墓前祭、お墓参りが行われます。
第十三候 玄鳥至(つばめきたる)

初候:毎年4月5日頃~9日頃 2026年は4月5日~9日
意味:燕(ツバメ)が南方から日本に渡ってくる
冬の間を南方で過ごした燕(ツバメ)が、日本に渡ってくる時期です。
「玄鳥」(げんちょう)は燕の異名で、特に農家では稲につく害虫を食べてくれる益鳥、家の軒下などに作られたツバメの巣は縁起物ともいわれています。
第四十五候 「玄鳥去(つばめさる)」9月18日頃~22日頃と対をなす候です。
第十四候 鴻雁北(こうがんかえる)
中候:毎年4月10日頃~14日頃 2026年は4月10日~14日
意味:雁(ガン)が北方へ帰っていく
冬を日本で過ごした雁(ガン)が、北の大地シベリアで夏を過ごすため飛び立つ時期です。
「鴻」は大型の雁の一種ヒシクイ、「雁」は小型のマガンなどを表し、いづれも渡り鳥です。
第四十九候 「鴻雁来(こうがんきたる)」10月8日頃~12日頃と対をなす候です。
第十五候 虹始見(にじはじめてあらわる)

末候:4月15日頃~19日頃 2026年は4月15日~19日
意味:雨上がりに虹が見え始める
雨上がりに浮かぶ虹が見え始める時期です。
冬の間、乾燥していた空気に湿気が含まれるようになるため、はじめは淡く消えやすい春の虹ですが、季節とともに次第にはっきりと見えるようになってきます。
第五十八候「虹蔵不見 (にじかくれてみえず)」 11月22日頃~26日頃と対をなす候です。
なお、「虹」の漢字に虫偏が使われているのは、古代中国で空にかかる虹が蛇(へび)や大蛇(龍)のような生き物と考えられ、貫くという意味の「工」をつけて、空を貫く蛇や龍に見立てたため、といわれています。
6)穀雨(こくう)毎年4月19日〜5月4日頃

※2026年は4月20日~
春の最後の節気で、田んぼや畑の準備が整い、暖かく柔らかい恵みの雨が穀物に命を吹き込みます。天候も安定し、種まきを始めるのに適した時期となります。
第十六候 葭始生(あしはじめてしょうず)
初候:毎年4月20日頃~24日頃 2026年は4月20日~24日
意味:水辺の葭(アシ/ヨシ)が芽吹き始める
水辺の葭(ヨシ)が芽吹き始める時期です。
葭(アシ)はイネ科の植物の葦(ヨシ)のことで、アシが悪しに繋がるとして、ヨシ(善し)とも呼ばれ、夏には2メートル以上に背丈を伸ばします。
古来より、よしずやすだれなどに用いられてきました。
第十七候 霜止出苗(しもやみてなえいづる)
中候:毎年4月25日頃~29日頃 2026年は4月25日~29日
意味:霜が収まり苗代の稲が育つ
農作物に被害をもたらす霜が降りなくなり、苗代の稲が生長する時期です。
耕した田んぼに水が張られ、田植えの準備が始まります。
第十八候 牡丹華(ぼたんはなさく)

末候:毎年4月30日頃~5月4日頃 2026年は4月30日~5月4日
意味:ボタンが花を咲かせる
牡丹(ボタン)の花が咲き始める時期です。
ボタンの花は大きく貴婦人のような佇まいと高貴な香りで、富貴花(ふうきか)や百花の王とも呼ばれます。
まとめ

二十四節気における春の3か月間を、七十二候の5日間ごとの描写で見ていくと、寒さの中にも少しずつ日照時間が延びて日差しに温かさを感じるなど、着実な春の気配や歩みが感じられたのではないでしょうか。
地域差もありますが、何となく想像できる部分や幼少期を思い出したり、あるいは見つけに行ってみたくなる新鮮な発見のようなものもあったかもしれません。
窓から外を眺めたり、通勤通学やお買い物の途中などに、ふと寒さの残る春の訪れからお花見へと爛漫たる季節を感じ、日々をさらに豊かに過ごせますように。
