「社日(しゃにち)」は、日本独自の暦「雑節」によって、春と秋の年に2回示された、農業において大切な節目の日のことです。
・春の社日:2024年3月25日(月)
・秋の社日:2024年9月21日(土)
とはいえ、ふだん聞き慣れない言葉でもあり、内容をイメージしにくいのではないでしょうか。
2024年の日付の決め方とともに社日の意味、由来、行事や春と秋の社日の違いなどを調べました。ご覧ください。
2024年の社日の日程
春と秋、年に2回
社日(しゃにち)は、「春分の日」例年3月20日頃、および「秋分の日」例年9月22日頃に最も近い「戊(つちのえ)の日」を指します。そのため毎年固定した日にはならないのです。
年2回、今年の日程は以下の通りです。
・春の社日:春社(しゅんしゃ/はるしゃ)2024年3月25日(月)
・秋の社日:秋社(しゅうしゃ/あきしゃ)2024年9月21日(土)
戊(つちのえ)の日と日程の決め方
「戊の日」とは、五行説に基づく『十干(じっかん)』の1つです。
「戊の日」とは、10日ごとに循環する「十干(じっかん)」の一つで5番目にあたります
十干は「木」「火」「土」「金」「水」の元素からなり、さらにそれぞれが「兄(え)」と「弟(と)」に分かれるとされています。
- 甲(こう・きのえ)
- 乙(おつ・きのと)
- 丙(へい・ひのえ)
- 丁(てい・ひのと)
- 戊(ぼ・つちのえ)←社日に関係する戊の日
- 己(き・つちのと)
- 庚(こう・かのえ)
- 辛(しん・かのと)
- 壬(じん・みずのえ)
- 癸(き・みずのと)
なお、十干は10日ごとに循環するため、春分の日や秋分の日が癸の日にあたると、戊の日と戊の日の間に挟まることになり、前の戊の日か後の戊の日かと疑問に思うかもしれません。
そのような場合には、太陽が春分点や秋分点を通過する時間によって、その年の社日が設定されています。
午前中に通過する場合は春分の日や秋分の日の前の戊の日、午後に通過する場合は後の戊の日と決められているそうです。
社日とは何?
季節の節目「雑節」の1つ
社日は、節分や八十八夜のように、「雑節(ざっせつ)」に分類される日の1つです。
雑節は、中国から伝えられた「二十四節気」だけでは表せない、日本ならではの季節の目印や農作業の目安となる日、祭りや祈願などに重要な日を補う必要から、日本人の季節感や生活文化に合わせて作られた、日本独自の暦です。
春は種をまく時期、秋は収穫の時期であるため、社日は農業に従事する人々にとっては特に意義深い日とされています。
※「二十四節気」とは、1年を春夏秋冬4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けて季節の節目を表したものです。(春分・秋分・夏至・冬至などが含まれます。)
※ 雑節には、節分や彼岸なども含まれています。よろしければ、こちら雑節とは?9つすべてを日程とともにご紹介 をご参照ください。
社日の由来や意味
社日は、「春分の日」と「秋分の日」にそれぞれ最も近い「戊(つちのえ)の日」のことです。
「戊(つちのえ)の日」は、動かない土とされる山などを象徴する「土の兄(つちのえ)」に由来して、土の神を祀る日とされました。
また社日の「社」という字は、その土地をまもる「産土神(うぶすなかみ)」を意味しています。この神様は地域ごとに存在し、その土地の豊かさとそこに住む人々を守ってくれるとされています。
そのため、大地に感謝し産土神を祀って、五穀豊穣を祈る日として、風習が続いてきました。
なお、産土神は生まれた土地の神様であるとともに、転居してその土地を離れたとしても、生涯守ってくれるとも言われています。
それにより安産や子宝の守り神ともされています。
春と秋の違いは
春と秋とでは祈る内容に関して、種をまく時期と収穫の時期とに合わせて、以下のように異なります。
・春の社日:麦や米などの五穀を奉納し、新たな1年の豊作を祈願します。
・秋の社日:収穫されたばかりの初穂を捧げて、実りへの感謝を伝えます。
※地域によっては、春の社日を「春社(しゅんしゃ/はるしゃ)」や「地神降り」、秋の社日を「秋社(しゅうしゃ/あきしゃ)」や「地神昇り」と表現することもあります。
地域ごとの風習や行事
社日は土地の神様を祀るものであるため、行事や風習も地域ごとに異なったものとなります。
地方によっては、この日を「社日さん」と親しみを込めて呼ぶこともあります。
以下にいくつかご紹介します。
・福岡県の筥崎宮(こさきぐう)
目の前にある箱崎浜の真砂(まさご)と呼ばれる細かい砂を「お潮井(おしおい」と呼び、竹かご「でぼ」に入れて持ち帰ります。この真砂は、厄除けや家の清めに使われ、特に新築の家にまくと良いとされています。また神社は蒙古(もうこ)襲来を跳ね返した由縁があるとされています。
・群馬県邑楽郡大泉町 社日稲荷神社
豊作祈願と実りに感謝の意を捧げる例祭に併せて、「探湯神事(たんとうしんじ)」という行事が行われます。沸騰したお湯を笹の束で撒くことで家内安全や厄払いを祈願します。
・長野県小県郡(ちいさがたぐん)
春社日には田の神様(お社日様)を迎えるためにお餅をつき、秋社日には稲の一株を神様に捧げる風習があります。
・神奈川県伊勢原市
土地の神様を祀るため農家にとっては休息の日となり、近隣の人々と集まって宴を楽しむ「地神講(じじんこう)」と呼ばれる風習が続いています。
他にもあると思いますが、かつて多くの人々が農業に携わっていた時代から、全国各地で産土神に関連したお祭りや参拝が行われ、重要な日とされていたことの一旦が伺えるのではないでしょうか。
まとめ
社日は「雑節(ざっせつ)」の1つで、春と秋の年に2回、「春分の日」と「秋分の日」にそれぞれ最も近い「戊(つちのえ)の日」のことを指します。
・春の社日:2024年3月25日(月)
・秋の社日:2024年9月21日(土)
この日は、生まれた土地と人々を守護する神様である「産土神(うぶすながみ)」をお祀りして、春には豊作を祈り、秋には収穫を祝い感謝を捧げます。
あまり聞き慣れない言葉ではありますが、日本ならではの季節や農作業の目印、お祭りや参拝祈願など重要な日とされ、今なお独自の行事や風習として受け継がれていることを知る機会となりました。
実は地元の神社や小さな地域での行事なども、調べてみると何かゆかりがあるということもあるのかもしれませんね。