「十二直」とは?北斗七星の指す方向と暦注内12の意味や内容

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暦・時

「十二直(じゅうにちょく)」と言われても、何のことかすぐにはピンと来ませんが、家の新築や建替えなどで、業者さんと日取りを決める際、もしかしたら耳にしたことがあるかもしれません。

よいお日柄とは、何でも「大安」なのかと思っていましたが、お世話になった建築業者さんは、「十二直」を考慮に入れる伝統があったので少し意外に感じました。

ところが、かつては日々の指針として、大安などよりも長く十二直の方を重んじていたそうです。

由来となった北斗七星の指す方向との関連、暦注に掲載されている12の意味や吉凶行事の内容について、調べてみました。

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十二直とは?

暦注のひとつで「中段」に掲載

「十二直(じゅうにちょく)」は、中国発祥の「暦注(れきちゅう)」の1つで、飛鳥時代に伝来し、日々の吉凶を見るため、飛鳥・奈良時代の律令制において宮中で制定された、日本最古の暦注「具中暦(ぐちゅうれき)にも掲載されている、長い歴史のあるものです。

仮名文字が普及し、簡略化された「仮名暦(かなれき)」では「中段」に掲載されたことから、「暦注中段」といわれています。

その後江戸時代まで、暦注で吉凶に関するものといえば十二直を指すほど重視され、また十二直の「直」の意味である「あたる」から、庶民の間で「当たる」と人気があったそうです。

大安などの「六曜」による吉凶が現在の形で普及したのは、昭和初期といわれています。

「具中暦」は、季節・行事・吉凶など日々に関する詳細が記された暦であるため、「暦注」と呼ばれたそうです。 欄外に日記を付した貴族も多く、中世における歴史史料としての価値も、高く評価されています。

カレンダーや暦の「暦注」とは?掲載内容の種類と意味 よろしければご覧ください。

十二直の由来

古代中国では、おおぐま座の北斗七星柄杓ひしゃくの「柄」(斗柄とへい)が、北極星を中心にして時計と反対回りに、1日で1周りすることが知られていました。

「十二直」は、この動きを12等分することで、季節や日、時刻などを定めるために用いられたものでした。

また、北斗七星はそのものが7柱の神として神格化され、運命を支配する力があると考えられていたため、その後は、北斗七星の動きが指す方角を十二支に割り当てて日々の吉凶の要素が加えられるものへと発展していきました。

(たつ)・(のぞく)・(みつ)・(たいら)・(さだん)・(とる)・(やぶる)・(あやぶ)・(なる)・(おさん)・(ひらく)・(とづ)の12で表されます。

十二支(干支)と方角の関係は以下の図の通りです。

十二直の割り当て方

古代中国では、「冬至」を暦の始点としていました。

この日に北斗七星の斗柄にあたる星が真北を指すことから、真北(子の方角)を建(おざす)月、「建子月(けんしげつ)」として、十二直も「」を旧暦十一月節の最初の子の日からスタートすると定めました。

そして、節月の最初に訪れる、月と同じ十二支の日に「建」を割り当て、以下「建・除・満・平・定・執・破・危・成・納・開・閉」を、1日ずつ順番に割り当てました。

この割り当て方は、月建(げっけん)と呼ばれるものです。

(※12の各月を十二支に割り当てたものは、十二月建と呼ばれており、「建子月」は、旧暦11月の異名です。)

「建おざす」には斗柄の先端が十二支の方角を指す(尾が指す)という意味があります。

なお、この際の「月」の区切り方は、通常の1日(朔日)~30(31)日(晦日)で表されたものとは異なり、二十四節気の節気で表された節切りによる一か月のことで、旧暦の節月せつげつ」となります。

また、二十四節気の日付けや期間は毎年同じとは限らず、国立天文台の「暦要綱れきようこう」により発表されます。

以下の表をご覧ください。

節月 二十四節気 十二月建 「建」の十二支
十一月節 大雪・冬至(小寒の前日まで) 子:建子けんし 子の日
十二月節 小寒・大寒(立春の前日まで) 丑:建丑けんちゅう 丑の日
正月節 立春・雨水(啓蟄の前日まで) 寅:建寅けんいん 寅の日
二月節 啓蟄・春分(清明の前日まで) 卯:建卯けんぼう 卯の日
三月節 清明・穀雨(立夏の前日まで) 辰:建辰けんしん 辰の日
四月節 立夏・小満(芒種の前日まで) 巳:建巳けんし 巳の日
五月節 芒種・夏至(小暑の前日まで) 午:建午けんご 午の日
六月節 小暑・大暑(立秋の前日まで) 未:建未けんび 未の日
七月節 立秋・処暑(白露の前日まで) 申:建申けんしん 申の日
八月節 白露・秋分(寒露の前日まで) 酉:建酉けんゆう 酉の日
九月節 寒露・霜降(立冬の前日まで) 戌:建戌けんじゅつ 戌の日
十月節 立冬・小雪(大雪の前日まで) 亥:建亥けんがい 亥の日

十二直の各々の意味や内容

吉凶について

現在、民間暦に掲載されている十二直の吉凶は、江戸時代のものから現代風に簡略化されており、科学的な根拠はないといわれています。

しかしながら、長年親しまれてきた歴史があり、現在においても建築業界では大安などの六曜より、重視される慣習が残っている面があります。

判断材料の1つとして、参考に知っておくというのも、よいかもしれません。

建・除・満・平・定・執・破・危・成・納・開・閉を吉凶で分けた場合は、概ね以下の通りです。

大吉: 満・平

中吉: 

小吉: 除・定・執・成・納・開

凶 : 破・閉

大凶: 

各々の意味や内容

12の項目について、順番に意味や内容(吉凶行事)をご紹介していきます。

建(たつ)

意味):万物を建て生じる日。何かを始めるのに最適なよい日。

吉行事):新しい衣を着る、柱を建てる、棟上げ、神仏祭祀、婚礼、開店、開業、移転、旅行、金銭授受、穀類収納

凶行事):動土(敷地内の土を動かすこと)、蔵開き、船に乗る

※建築業界における良い日ですが、土木工事は避けた方がよいとされています。

除(のぞく)

意味):万物を折衝して百凶(障害)を除き去る日。不浄や悪いものを「除く」ことによい日。

吉行事):物を捨てる、すす払い、沐浴、治療開始、服薬、種まき、井戸掘り、仕事始め

凶行事):婚礼、見合い、夫婦交合、動土、勝負事

満(みつ)

意味):天上の最高神「天帝」の蔵に天の宝を満たし、万物が満ちあふれる日。全ての事が満たされる最良な日。

吉行事):建築、家造り、婚礼、神仏祭祀、旅行、開店、開業、移転、種まき、収納

凶行事):動土、服薬始め

平(たいら)

意味):天帝たちが集まり、善悪共に平らかになる日。物事が平等円満に成立する日。

吉行事):婚礼、引越し、旅行、相談事、道路修理、壁塗り、柱建て、地固め

凶行事):種まき、動土、川・溝・穴を掘ること

定(さだん)

意味):物事の善悪定まってとどまる日。何事を決定するにもよい日。将来の基礎を固めるのによい日。

吉行事):婚礼、祈祷、種まき、売買契約、建築、開店、開業、移転、種まき

凶行事):旅行、樹木の植え替え、訴訟

執(とる)

意味):物事を執り行う日。万物の活動の育成を促す日。物を受け入れる日。

吉行事):婚礼、神仏祭祀、建築、狩猟、種まき、五穀収穫、買い物

凶行事):訴訟、借金、財産整理、勝負事、蔵開き

破(やぶる)

意味):物事を衝き破る(突破する)日。破れる、破壊の日。

吉行事):訴訟、出陣、狩猟、服薬

凶行事):契約、婚礼、神仏祭祀、約束事、勝負事、旅行、建築、開店、開業

危(あやぶ/あやう)

意味):厄が集約する険悪の日。万事において危惧する日。何事も自重が大切な日。

吉行事):神仏祭祀、家造り、婚礼、酒造り、種まき、木を切る

凶行事):登山、高所、水辺の遊び、旅行、乗船

成(なる)

意味):物事が成就する日。新たな事を始めるのによい日。

吉行事):婚礼、建築、商談、開店、開業、入学、種まき、仕込み、旅行、習い事始め、金銭借入

凶行事):訴訟、談判事

収(おさん)

意味):万物を収斂しゅうれんする(取り納める)日。物事を納めるのに適した日。天倉てんそう(宝を蔵にしまう日)。

吉行事):買い物、商品仕入れ、金銭借入、集金、五穀収穫、収納

凶行事):葬儀、神仏祭祀、婚礼、見合い

開(ひらく)

意味):天帝の使者が険難(困難)を開き(取り除き)、運や道が開ける日。物事を始めるのに適したよい日。

吉行事):入学、就職、婚礼、移転、転居、開業、開店、建築、学業、事始め

凶行事):葬式、不浄な事

閉(とづ)

意味):陰陽の気が閉じ塞がって通れず、何事も閉止する日。万事が成就しない日。

吉行事):建墓、葬儀、池の埋立て、穴を塞ぐ、修繕、金銭の収納

凶行事):婚礼、開店、開業、移転、建築、祭事、祝い事

まとめ

十二直は、古代中国発祥で、元は北斗七星の斗柄の星が移動する方角から季節を知る方法でしたが、吉凶要素が加わり、日本伝来後の奈良時代から暦注に掲載され、中段に記された当たる吉凶占いとして、長く庶民に親しまれてきたものです。

迷信といわれながらも、今なお建築業界では「よいお日柄の参考」として、重視されているところがあります。

古来からの暦(暦本)を手に取る機会や、十二直の「建・除・満・平・定・執・破・危・成・納・開・閉」の12文字のいづれかを目にした際、建築普請や地鎮祭などを経験する時など、あらかじめ知っておくことでご参考になればさいわいです。

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