ニュースや天気予報で「今日、木枯らし1号が吹きました」と耳にすると、もうそんな時期かと冬の訪れを感じる方は多いのではないでしょうか。
ところが、「木枯らし1号」は全国区でおなじみというわけではなく、東京地方と近畿地方のみで用いられる気象用語であると、友人との会話で知りました。
改めて調べてみると、発表される条件に満たない場合には「吹かない」年もあるなど、興味深い内容がありました。ご覧ください。
「木枯らし1号」の意味とは?
呼び名は気象用語
「木枯らし1号」とは、秋の終わりから冬の始まりにかけて、初めて感じる強い北寄りの風を指し、条件を満たした場合に、気象庁より発表される気象用語です。
木々を枯らすほどの勢いで吹き荒れる風、というのが名前の由来で、冬の訪れを告げる冷たい強風を表しています。
「1号」という表現は、台風の番号付けにならって使われるようになったものとされ、日本気象協会 出版 の「気象」という雑誌で用いられた後、1970年代から新聞に登場しますが、いつから呼ばれるようになったのかは定かではありません。
また、木枯らし1号の対となる「春一番」も気象用語で、こちらは春の始まるころに初めて感じる強い南寄りの風を指します。
どちらも季節の変わり目を象徴する風といえます。
発生する状況
西高東低の、いわゆる冬型の気圧配置の時期になると、大陸から湿った季節風が日本へと吹き込みます。
日本の中央には高い山脈が連なっており、これらの山々に風がぶつかると、日本海側では湿った空気は雨や雪となり、山脈を越えた太平洋側では乾燥した強い風が吹く、これが木枯らしの発生する状況です。
特定の地域だけで呼ばれる理由
ある地域では「木枯らし1号」という用語を聞いたことがないかもしれません。
実際、木枯らし1号の公式発表は、東京地方と近畿地方に限定されています。他の地域では、同様の強風が吹いても「木枯らし1号」としての発表はありません。
これには平野部という地理的な要因と、人口密集地域における強風の影響の大きさ、頻繁に観測される地域であるということが関係しているようです。
台風のような追跡も必要なく、認定される一定の条件も厳格なため、他の地域では観測される日が少ないためとも言われています。
🔷木枯らし一号は吹いた後に発表されるため、特に注意を促すものではなく、必要時には暴風の注意報や警報は別途発表されるということです。
木枯らし1号の定義や条件とは?
気象庁によると、木枯らし1号は
「具体的には、10月半ばの晩秋(ばんしゅう)から11月末の初冬(しょとう)の間に、初めて吹く毎秒8メートル以上の北よりの風のことです。」
と定義されています。
・10月半ばの晩秋(ばんしゅう)から11月末の初冬(しょとう)の間とは、西高東低の冬型の気圧配置になる時期です。日本列島の西(日本海)側で高気圧が発達し、東(太平洋)側で低気圧が発達する頃を指します。
・「北よりの風」とは、北西~北東の間から吹いてくる風を指します。
風速毎秒8メートルとは、1秒間に空気が8m移動することで、時速約29km(8m×60秒×60分)になります。車の窓を開けて時速30キロで走行している時に、顔にあたる風の強さくらいとなります。また、強風注意報は平均風速10mが目安なので、風速8mはやや強い風だということが伺えます。
また、東京地方と近畿地方でそれぞれ一定の条件があります。
東京地方の条件
東京都のうち伊豆諸島、小笠原諸島を除いた地域を指します。
10月半ば~11月末の期間に、 西高東低の冬型の気圧配置で季節風が吹き、東京で風向が西北西~北であり、 東京の最大風速が概ね風力5(風速8m/s以上)が、木枯らし1号の条件です。
近畿地方の条件
京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県を指します。
霜降(10月23日頃)~冬至(12月22日頃)までの期間に、西高東低の冬型の気圧配置となり、風向が 北よりの風(北西~北東の間から吹いてくる風)であり、 最大風速が8m/s以上(さらに大阪、神戸、京都、舞鶴、彦根、和歌山、奈良のうち3地点以上で観測した場合)に、木枯らし1号と発表されます。
※今年2024年の霜降は10月23日、冬至は12月21日です。
最近はいつ吹いた?
統計的に、木枯らし一号は二十四節気の一つ「立冬」の時期、例年11月7日頃に吹くことが多かったのですが、近年は10月も多いようです。
最近10年間の観測日は以下の通りです。
東京地方 | 近畿地方 | |
2014年 | 10月27日 | 10月27日 |
2015年 | 10月24日 | 10月25日 |
2016年 | 11月9日 | 10月29日 |
2017年 | 10月30日 | 10月30日 |
2018年 | なし | 11月22日 |
2019年 | なし | 11月4日 |
2020年 | 11月4日 | 10月23日 |
2021年 | なし | 10月23日 |
2022年 | なし | 11月13日 |
2023年 | 11月13日 | 11月11日 |
2024年 | ? | ? |
吹かない年もある
木枯らし1号の定義は「10月半ばの晩秋(ばんしゅう)から11月末の初冬(しょとう)の間に、初めて吹く毎秒8メートル以上の北よりの風」であり、東京地方と関東地方のそれぞれの条件を満たさない場合には、その年の木枯らし1号は発表されないことになります。
例えば、強風があっても、風速が秒速7メートルであったり、12月に入ってからの風であったりすると、木枯らし1号としてはカウントされないのです。
最近の10年でみると、東京地方は4年も木枯らし1号が吹かなかった(発表されなかった)ことがあるのですね。検索すると、昨年は「3年ぶりの発表」という記事がありました。
2号3号はナシ
木枯らし1号以降も条件を満たす強風が吹くことはあります。
2号3号はあるのか気になるところですが、台風のような連番がついて気象庁から発表されることはありません。
台風のような追跡の必要がなく、その都度吹く風であることや、全国区ではなく東京地方と近畿地方限定の発表であることなどのようです。
まとめ
「木枯らし1号」は、秋から冬にかけて初めて吹く毎秒8メートル以上の北寄りの強風を指し、それぞれの条件を満たした場合にのみ、東京地方と近畿地方限定で、気象庁より発表される気象用語です。
「立冬」と呼ばれる毎年11月7日頃に吹くことが多いとされてきましたが、条件に満たない場合は「吹かない(発表のない)」年もあります。
木々を枯らすほど吹き荒れる、冷たく乾燥したこの風は、西高東低の冬型の気圧配置により生じることから、まさに冬の訪れを告げる象徴のようにも感じます。
今年2024年は、どうなるのでしょう。ニュースなどで気に留めて、冬支度に入ってみてはいかがでしょうか。