晴れながら降る雨「狐の嫁入り」その仕組みと別名や意味とは?

気候・天候

晴れているのに急に雨が降ってきて、空を見上げると晴れたままという不思議な現象を経験することがありませんか?

あなたはそれを何と表現していますか?

他の呼び名が一般的な地域もありますが、関西を中心に「狐の嫁入り」と呼ばれることが多いようです。

「狐の嫁入り」とは何か、なぜこのような自然現象が起きるのか、別名などが気になりましたので、調べてみました。ご覧ください。

狐の嫁入りの意味とは

 

「日照り雨」と「狐火」

辞書によると「狐の嫁入り」には2つの意味があります。

1 日が照っているのに、急に雨がぱらつくこと。日照り雨。

2 夜、山野で狐火が連なって、嫁入り行列の提灯 (ちょうちん) のように見えるもの。

出典:「デジタル大辞泉(小学館)」より

日照り雨(ひでりあめ)と狐火(きつねび)の2つの意味があり、一般的に1の「日照り雨」の意味で用いられています。

1.晴天のまま急に降る短時間の雨

「日照り雨」とは、晴天なのに突然、10分程度の短時間雨が降る現象ですが、雨量にはばらつきがあります。

パラパラ程度から地面に水たまりができるほどの激しい場合もあり、雨宿りしてやり過ごしていると何事もなかったかのような晴天が戻ってきて、「今の天気は何だったのか」と驚くものです。

 

これがあたかも「狐につままれたような」とか、「狐に化かされたような」という、思いがけない出来事に出くわしてあっけにとられた状況になることを表現しているともいわれています。

2.嫁入り行列の灯り

かつて、花嫁が実家から花婿の家へ移動する際に、先頭の親族が提灯を持ち道を照らしながらて行列を組んで進む「嫁入り行列」が行われていました。

夜に遠くの山野で狐火(きつねび)がいくつも連なってみえる場合、嫁入り行列の提灯に例えられて「狐の嫁入り」といわれることがあります。

狐火とは、夜に山野などで自然発火して光って見える「燐火(りんか)」のことで、「鬼火(おにび)」とも呼ばれています。

 

また、これらにまつわる地域の行事が行われているところがあります。

京都府、高台寺周辺の狐火

かつてこのあたりでは狐火が多くみられたことから、ボランティアによって20年続いていた高台寺「狐の嫁入り行列」は、今年2024年4月に惜しまれながら終了してしまいました。

新潟県、つがわ狐の嫁入り行列

江戸時代の嫁入りを再現しており、一度途絶えたのち1990年から商工会によって復活し現在も6月に行われています。

この地域ではキツネがいたこと、狐火が発火しやすく、また嫁入りは夜にかけて行われ、暗い中を堤灯を下げて行列しこれらが平行して見えたことから、狐の嫁入り行列が生まれたとも言われるそうです。

・群馬県、みのわの里のきつねの嫁入り

高崎市の地域に伝わるご祝儀や和装文化を伝承する目的で、嫁入り行列の再現やきつねメイクなど20年前から町おこし行事として、住民主体で毎年10月に行われています。

 

「日照り雨」を「狐の嫁入り」と呼ぶ言われ

人除けの雨やうれし涙

狐が嫁ぐ日は、人間同様行列を作って大いに祝いたいと考えましたが、人目につくと問題が生じるため、雨を降らせて人目を避けるというルールがある、という逸話が多く語り継がれています。

また、その嫁ぐ狐のうれし涙が雨を降らせるという説や、反対に悲しい涙にまつわる逸話もあります。

これらによって「晴天のまま雨が降るのは狐が嫁ぐからだ」という話が広まりました。

狐への親しみや畏敬の念

京都を中心とする関西では、古来から狐は「お稲荷さん」の眷属(けんぞく/神の使者)として、食べ物が少なくなる冬には「野施業(のせぎょう)」もしくは狐施業、寒施行(かんせぎょう)として巣穴などに食べ物を施す風習があるほど、身近なであり親しみや感謝、畏敬の念を込めて接してきた存在といえます。

そこで「日照り雨」という珍しい自然現象を、狐の持つ人を惑わす力とともに、神の使いともされる力に例えて、『狐の嫁入り』といった言葉で呼んだのではないかと言われています。

「狐の嫁入り」発生の仕組みと別名

発生する3つのケース

主には、雨が雲から地面に到達するまでには10分以上時間がかかるため、その間に雨を降らせた雲の存在する場所が移動して、実際に雨が地面に届く場所とが異なることによって生じる現象です。

またこの時、降り注ぐ雨に太陽光が当たることで、光が屈折して、太陽の反対側に虹が出やすい傾向にあるとも言われています。

具体的には以下の3つのケースがあります。

地面に雨が届く前に降らせた雲が風で移動し真上にない

雲から約2000メートルの高さから雨が落ち始め、地面に達するまでに10分以上かかるといわれています。

この間に雲が風で移動したり消えたりするため、雨が地面に到達する頃には、空を見上げると晴天となっているということになります。

雨雲が小さすぎて目立たない

肉眼で見た視界では、晴れているように見えても、周囲に小さすぎて目立たない雨雲が存在していることがあります。ごく小さな雨雲によって雨が降ることがあります。

雨が風で晴天の場所に運ばれた

離れた場所の雲から作られた雨が、強い風によって運ばれ、地面に達するまでの間に晴れている地域に到達したことによって雨が降り注ぐことがあります。こちらも雨雲の位置との齟齬によって生じるものです。

同じ現象の別名は

晴天のまま急に降る雨には、複数の別名が存在します。 一例をあげます。

「日照り雨」「日照雨」(ひでりあめ)

辞書に示されていた通りです。太陽が輝いているにも関わらず雨が降るため。

「天気雨」(てんきあめ)

「天気がいい」とは晴天を意味することから、「晴れているのに雨が降る」ため 。

こちらの方が、関東を中心に一般的な呼び名とされています。

「天泣」(てんきゅう)

雨を涙に例え、お天道様が泣いているという考えから。

「日向雨」(ひなたあめ)

日が照っているのに降る雨の意味。

「日和雨」(ひよりあめ)

日和には良い天気や天候から、晴れの意味がある。

「戯雨」(そばえあめ)

戯(そばえ)るとは、たわむれる、ふざけるの意味。天がふざけてを降らせた意味。

 

他にも「狐雨」「狐のご祝儀」など各地に呼び名があります。

まとめ

「狐の嫁入り」は「日照り雨」や「天気雨」などとも呼ばれ、晴天のまま突然短時間の雨が降る現象を指します。

これは雨が雲から地面に到達には10分以上時間かかり、その間に雨を降らせた雲が移動して、実際に雨が地面に届く場所とが異なることによって生じる自然現象です。

とはいえ気象解説のない時代には、何とも奇妙で化かされたような、あるいは計り知れない大いなるものの力や存在を感じたことでしょう。

もし狐の嫁入りに遭遇した際は、風雅な呼び名の意味や背景に思いをはせながら、虹が現れやすい気象条件でもあることを楽しみに、空を見上げながら雨が止むまでのひと時を待ってみてはいかがでしょうか。

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