秋の季語「金風の候」いつ挨拶に使える?意味・由来・例文で詩情豊かに

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「金風の候」は、10月中に使える便利で詩情豊かな時候の挨拶語ですが、読み方・本来の意味や由来、他の挨拶語との使い分けや時期に迷うといったことはありませんか?

今回は、季語と歳時記・二十四節気と時候の挨拶の視点で整理し、季節に沿った時候語の選び方一覧と、そのまま使える例文集もご紹介いたします。最後に公案「体露金風」についても触れておりますので、どうぞご覧になってください。

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 「金風(きんぷう)」とはどんな風?

 秋の季語としての意味・由来と背景

「金風(きんぷう)」は、秋に吹きわたる澄んだ風を意味する秋の季語です。

由来は五行思想で、四季を「木火土金水」に配したとき秋=金に当たることから生まれました。

歳時記では、広い括りの親季語「秋風」のもとに置かれる子季語で、秋の成熟や爽やかさを帯びたニュアンスが特徴、読み方は「きんぷう」です。

俳句などの季語以外には、時候の挨拶の定型として「金風の候(きんぷうのこう)」の形で用いられています。

五行陰陽説

  • 陰陽説 … 万物は「陰」と「陽」という二つの性質が拮抗しつつ調和しているという考え方
  • 五行説 … 万物を木・火・土・金・水に配し、季節と色その他に対応づける体系
    • 木=春=青(緑)/火=夏=赤/土=土用=黄/金=秋=白/水=冬=黒。の

これらの対応から、秋の風を金風、同義に白風とも呼び、白=無色・透明のイメージは、華美さを脱いで本質が立ち上がる秋らしさとも響き合うものといえるでしょう。

他の秋の季語との関連性

歳時記では、親季語「秋風」のもとに子季語が並び、色・音・土地の呼び名などで風の表情を表すバリエーションがあります。例えば・・・

  • 金風 … 五行由来。秋=金=白の背景を帯び、清冽な気配を運ぶ
  • 白風 … 秋の色がに配されることを示す別称
  • 爽籟(そうらい) … 風のさやかな音に焦点を当てる表現
  • 色なき風 … 彩りを抑えた秋の質素・透明感を言い表す語
  • 雁渡し … 雁の渡来にまつわる地方風名(歳時記によっては独立項で扱われる)

「金風の候」の時期10月の季節感

季語としての「金風」は、旧暦の三秋(初・仲・晩)=立秋〜立冬前日にわたって詠まれます。

一方、手紙文の時候の言葉「金風の候」は、10月中に用いるのが目安となります立冬以降は避けるのが基本です)。

10月の時候の挨拶は、他にも秋の深まりとともに、上旬=「秋冷/秋雨」、中旬=「清秋/夜長」、下旬=「紅葉/晩秋/錦秋」と移ろっていきます。

そこへ通月で使える便利語として「金風の候」を置くことで、相手の方の地域差にも配慮しつつ、気候の進み具合に合わせた挨拶がしやすくなります。

  • 季語の金風=情景表現
  • 金風の候=書簡の時候挨拶の定型句

 俳句や和歌に詠まれた「金風」の風景

「金風」を直接詠むのは近現代の俳句に多く、古典は「秋風(あきかぜ)」もしくは「金風」を「あきかぜ」と読んで秋の景色を描くのが一般的だったようです。

  • 稲畑汀子「吹きひろげゆく金風や樟大樹」(ホトトギス 2001年10月掲載)
    口語訳:秋の風がさっと広がり、堂々たるクスノキがその風を全身で受け止めている情景
  • 稲畑廣太郎「金風となりて醤油の香と共に」(ホトトギス 2001年9月掲載)
    口語訳:秋の風が、どこからか漂うしょうゆの香りを運び、季節の気配をいっそうはっきり感じさせる
  • 武田菜美「金風の折目正しく曲り来る」(銀化 2000年11月)
    口語訳:秋の風がきちんと折り目正しい所作で角を曲がってくるように感じられる、端然とした秋の気配

・「金風 山吹瀬乃 響苗 天雲翔 鴈相鴨」万葉集巻九・1700(柿本人麻呂歌集)

訓読:秋風に山吹の瀬の鳴るなへに天雲翔る雁に逢へるかも:典和歌(秋風)より

口語訳:秋風が吹き、山吹の瀬(=浅く速い流れ)の水音が響くなかで、天の雲のあたりを翔けていく雁の群れに出会ったことよ

どれも金風=秋風の趣が立体的に伝わるように感じませんか?

 「金風の候」を使った時候の挨拶例文集

主にビジネスで用いる場面では、メールもしくは配布用印刷物としてご利用いただける例文をお示ししております。

カジュアルな場面では、メールのほか一筆箋などに筆ペンで縦書きしてもステキですよね。

 「金風の候」を使うメリットと注意点

  • メリット
    • 10月通月で使いやすい万能フレーズ
    • 漢語調で格調があり基本的にビジネス等で用いられる
    • 天候や地域差に左右されにくく、季節感を上品に伝えられる
  • 注意点
    • 11月(立冬以降)は使用しない。冬の挨拶に切り替える
    • 親しい相手には口語調に言い換えてよそよそしさを避ける
    • 頭語と結語は対で用いる(拝啓↔敬具/謹啓↔謹言・謹白)
    • 地域差へ配慮(暑さ・寒さ・紅葉の進み具合など)した結び文(朝夕は肌寒さが増す折、どうぞご自愛ください/実りの秋、さらなるご発展をお祈り申し上げます等)
    • 「金風の候」と他の時期の表現の混在に注意

H3 ビジネスシーンでの例文3つ

例文1(取引先全般)

拝啓 金風の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。まずは書中にて日頃の御礼を申し上げます。
敬具

例文2(提案・案内同封時)

謹啓 金風の候、貴社いよいよご隆盛のことと拝察いたします。
さて、同封の通り新企画のご提案書をお送り申し上げます。ご高覧のうえ、ご検討賜れましたら幸いに存じます。
謹言

例文3(イベント終了後の御礼)

拝啓 金風の候、貴社におかれましてはますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
先日の共同開催に際しましては、格別のご尽力を賜りありがとうございました。引き続き変わらぬお付き合いのほどお願い申し上げます。
敬具
置換のヒント:
「貴社→貴店/貴団体/貴学」「ご清栄→ご清祥/ご盛業」「拝察→お慶び」と差し替えると、相手や文脈に合わせやすくなります。

 秋の行事・イベントに合わせた例文3つ

例文1(内定式の時期に)

拝啓 金風の候、貴社におかれましては新たな人材を迎えられ、ますますのご発展と存じます。
このたびの内定式のご盛会、心よりお祝い申し上げます。今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。
敬具

例文2(学園祭・文化祭の案内/御礼)

謹啓 金風の候、貴校いよいよご清祥のことと拝察いたします。
さて、来る学園祭のご案内をいただきありがとうございました。ご盛会をお祈り申し上げます。まずは書中にて御礼かたがたご挨拶申し上げます。
謹言

例文3(ハロウィン販促・イベント後のご挨拶)

拝啓 金風の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
先般のハロウィンイベントでは多大なお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。今後ともご愛顧のほどお願い申し上げます。
敬具

 カジュアルな挨拶文の例文3つ

※親しい相手には、漢語調を避けた口語が自然です。

例文1(近況うかがい)

金風(きんぷう=秋の風)が心地よい季節になりましたね。お変わりなくお過ごしでしょうか。朝晩は冷えてきましたので、どうぞご自愛ください。

例文2(お礼+次の予定提案)

先日はお時間をありがとうございました。金風に誘われて散歩が楽しい頃ですね。来週あたり、紅葉を見に行きませんか。

例文3(季節の共有)

金風が運ぶ金木犀の香りに、季節の移ろいを感じます。温かい飲み物がおいしい頃です。どうぞ体調に気をつけてお過ごしください。

 秋の時候の挨拶一覧と「金風の候」の前後の言葉

 二十四節気に沿った時候の言葉

時候の挨拶として用いる「〜の候/〜のみぎり/〜の折」は、二十四節気の進み方を手がかりに選ぶ方が一般的です。

秋は立秋(8/7頃)~立冬(11/7頃)の前日までで、

立秋(8/7頃)→処暑(8/23頃)→白露(9/7頃)→秋分(9/23頃)→寒露(10/8頃)→霜降(10/23頃)→立冬(11/7頃)

このように移ろいます(年により前後します)ので、この流れに合わせてそのまま「白露の候」「霜降の候」などと節気語を切り替えていくと、読み手の体感とズレにくく、上品な印象になります。

秋(立秋~立冬前日まで)の挨拶一覧

  • 初秋(立秋〜白露)
    立秋の候/新秋の候/残暑の候/秋涼の候/処暑の候
  • 仲秋(白露〜秋分)
    白露の候/仲秋の候/爽秋の候/清秋の候/秋雨の候/夜長の候
  • 晩秋(寒露〜霜降〜立冬前日)
    寒露の候/霜降の候/錦秋の候/紅葉の候/晩秋の候/秋麗(しゅうれい)の候

9月・10月上・中・下旬・11月で分けた場合

  • 9月(上〜中旬)秋涼の候/白露の候/仲秋の候/秋雨の候/夜長の候
  • 10月上旬金風の候清秋の候/爽秋の候/秋冷の候
  • 10月中旬金風の候夜長の候/秋麗の候
  • 10月下旬金風の候紅葉の候/錦秋の候/晩秋の候
  • 11月上旬(立冬前日まで)霜降の候/錦秋の候/晩秋の候

9月〜11月の時候語一覧表(節気×三秋)

時期 二十四節気の目安 三秋 主な時候の挨拶語
9月上旬 〜白露前(〜9/6頃) 初秋 秋涼の候/爽秋の候/新秋の候/(※暑い場合は残暑の候も)
9月中旬 白露(9/7頃〜) 仲秋 白露の候/仲秋の候/秋雨の候/夜長の候/清秋の候
9月下旬 秋分(9/23頃) 仲秋 秋分の候/夜長の候/清秋の候/秋冷の候
10月上旬 〜寒露前(〜10/7頃) 仲秋→晩秋入口 金風の候/清秋の候/爽秋の候/秋冷の候
10月中旬 寒露(10/8頃〜) 晩秋 金風の候/秋麗(しゅうれい)の候/夜長の候/寒露の候
10月下旬 霜降(10/23頃〜) 晩秋 金風の候/紅葉の候/錦秋の候/晩秋の候/霜降の候/(※地域・体感により金風の候も可)
11月上旬 霜降〜立冬前日(〜11/6頃) 晩秋 霜降の候/錦秋の候/晩秋の候(※立冬以降は冬語へ切替)
  • 「金風の候」=10月通月の便利語です。
  • 11/7頃の立冬を過ぎたら、初冬の候/向寒の候など冬の挨拶へ。

 時候の挨拶の参考になる辞書や書籍

  • 国語辞典:『広辞苑』『大辞林』『明鏡国語辞典』—語義・用例確認に有用
  • 歳時記:角川『俳句歳時記』新版/『合本 俳句歳時記』(角川ソフィア文庫)—季語の位置づけ(親季語・子季語)と例句 など
  • 手紙作法・文例:『手紙の書き方大事典』『手紙事典』など—頭語と結語の対応、TPO別の定型
  • 暦・節気:暦要覧・こよみサイト—その年の節気日付を確認し、地域差と併せて微調整

まとめ

「金風の候」は、秋の深まりを感じさせる時候の挨拶として、10月中の季節の移ろいを伝えるのに用いられます。

意味や由来を理解しておけば、ビジネスからカジュアルまで幅広い場面で活用できます。

挨拶文に添えるだけで、手紙やメールの印象がぐっと上品で詩情豊かになることでしょう。

秋の季語や二十四節気の表現を適切な時期に合わせて使いこなすことで、相手への気遣いとともに、ご自身ももっと季節の美しさを味わいませんか。

公案「体露金風」の意味

禅の公案を集めた『碧巌録』第八則には「体露金風(たいろきんぷう)」という語が登場します。ご存じの方もおられるでしょう。

原文は「体露金風、言語道断」、直訳すれば「身は金風に露わとなり、言葉では語り尽くせない」となります。
ここでいう「金風」とは秋の冷ややかで澄んだ風のことで、余計な衣を脱ぎ捨て、身も心もその風にさらされる姿は、飾りを離れ本来の自己に立ち返る境地を示していると解釈されます。

「人生の秋」と重ねるメッセージ

四季の秋が深まるように、人生にも「実りと静けさ」の季節があるように考えられてきました。

『碧巌録』の「体露金風」は、寂しくもの悲しい(人生の)秋を嘆くというよりも、余分なものを脱ぎ捨てて本来の自分に還る、前向きな境地を示しています。
五行において秋を象徴する「白」は、透明で色がないことを意味し、裏を返せば何色にも染まれる可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。

子育てや仕事といった大きな役割を終えたあとだからこそ、また自由に、自分らしく生き直すことができる——そのような励ましを、この言葉から受け取ることができるでしょう。
時候の挨拶として「金風の候」を用いるとき、こうした背景に思いを馳せると、単なる形式を超えて心温まる想いを込めることができるのではないか、と個人的には信じているのです。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

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