実は、海の満ち引きは目の前の海だけで起きている現象ではありません。
暦に記される新月や満月などの月の巡りは、地球・太陽との位置関係を通して、大潮や小潮へつながっています。
潮汐のしくみを知ることは、海辺の風景の奥にある壮大な宇宙の動きを感じ取ることでもあるのです。
潮位の調べ方とともに、潮干狩りや海辺の景色を楽しむ旅程などに役立ててみませんか?
潮汐とは?月・地球・太陽が生み出す潮の満ち引き

潮汐(ちょうせき)と満潮・干潮の意味
海辺を眺めていると、同じ場所でも海面の高さが時間とともに変わっていきますよね。海面の水位(潮位)が周期的に上がったり下がったりする現象が「潮汐(ちょうせき)」です。
「潮の満ち引き」や「潮の干満」は、潮汐を日常的な言葉で表したものです。
潮汐によって海面が最も高くなった状態を「満潮」、最も低くなった状態を「干潮」と呼びます。似た言葉も含めて、意味を確認しておきましょう。
| 意味 | |
| 潮汐(ちょうせき) | 海面が周期的に上下する現象 |
| 満潮(まんちょう/みちしお) | 潮位が上がりきった状態 |
| 干潮(かんちょう) | 潮位が下がりきった状態 |
| 上げ潮(あげしお) | 干潮から満潮へ向かい、潮位が上がっている状態 |
| 下げ潮(さげしお) | 満潮から干潮へ向かい、潮位が下がっている状態 |
| 潮差(ちょうさ) | 満潮時と干潮時の潮位の差 |
日本の多くの沿岸では、海面がおよそ半日周期で上下します。
ただし、すべての場所で同じ動きをするわけではありません。海岸の形や水深などによって、一日に一度しか満潮・干潮がはっきり現れない日や、二度の満潮の高さが大きく異なる日もあります。
月と太陽の引力によって潮汐が起こる仕組み

潮汐は、月や太陽の引力によって地球がわずかに引き伸ばされることで起こる現象です。
陸地も影響を受けますが、海水は陸地より動きやすいため、その変化が潮の満ち引きとして目に見えて現れるのです。
なかでも、潮汐に大きく関係しているのが月です。
月の引力は、地球上のどこでも同じ強さではありません。月に近い場所ほど強く、遠い場所ほど弱くなります。
そのため、月に近い側の海水は、月に強く引かれて盛り上がり、月と反対側では、地球本体のほうが海水より強く月側へ引かれるため、海水が取り残されるように外側へ盛り上がります。
これは、地球と月が両者の間にある回転の中心(共通重心)を基準にして、太陽の周りを公転していることとも関係しています。
このような月の引力の強さの違いと、地球と月の動きによって、地球は月側とその反対側へわずかに引き伸ばされて潮汐を起こす働きのことを「起潮力」といいます。
その結果、地球の海面が月に近い側と反対側の2か所で高くなった状態が満潮、その中間で海面が低くなった状態が干潮となるのです。
ただし、実際の海には大陸や島があり、水深や海岸の形も異なるため、月が真上に来た時刻と満潮の時刻には、数時間のずれが生じることがあります。
太陽の引力も潮汐に影響している
潮汐に最も大きく関係するのは月ですが、太陽にも起潮力があります。
太陽は月よりはるかに大きな天体であるものの、地球から非常に遠く離れています。潮汐を起こす力は距離の影響を大きく受けるため、太陽の起潮力は月のおよそ半分とされています。
月と太陽の力は、それぞれ別々に海面へ働きます。
両者の方向がそろえば潮の満ち引きは大きくなり、方向がずれると小さくなる、この変化が大潮や小潮と呼ばれる潮回りを生み出します。
月・地球・太陽の位置関係と朔弦望・潮回りの関係

朔弦望(さくげんぼう)とは、月の満ち欠けの節目を表し暦にも記載される言葉です。
- 朔(さく):新月
- 上弦(じょうげん):新月から満月へ向かう途中の半月
- 望(ぼう):満月
- 下弦(かげん):満月から新月へ向かう途中の半月
月の形が変わって見えるのは、太陽に照らされた月を地球から見る角度が変わるためで、朔から次の朔までの周期は平均約29.5日、この間に上弦、望、下弦を順に迎えます。
月の満ち欠けは、月・地球・太陽の位置関係を知る手がかりであり、大潮や小潮などの潮回りとも結びついています。
月・地球・太陽の位置関係と朔弦望・潮回り一覧表
それぞれの関係について、まずは一覧表で整理しておきましょう。
| 暦の呼び名 | 月の状態 | 月・地球・太陽の位置関係 | 潮回りの目安 | 潮の動き |
| 朔(新月) | 月がほとんど見えない | 太陽・月・地球からほぼ一直線に並ぶ | 大潮 | 月と太陽の起潮力が重なり、満潮と干潮の差が大きくなりやすい |
| 三日月から上弦前後 | 月と太陽の方向が次第に離れていく | 中潮から小潮 | 大潮を過ぎると潮差が徐々に小さくなる | |
| 上弦 | 右半分が明るい半月 | 地球から見て月と太陽の方向がほぼ直角になる | 小潮 | 月と太陽の起潮力が異なる方向に働き、潮差が小さくなりやすい |
| 上弦を過ぎた月から満月前 | 月と太陽の方向が再び一直線に近づく | 長潮・若潮を経て中潮 | 小さかった潮差が再び大きくなっていく | |
| 望(満月) | 月全体が丸く見える | 太陽と月が地球を挟んでほぼ反対方向に並ぶ | 大潮 | 月と太陽の起潮力が重なり、潮差が大きくなりやすい |
| 満月後から下弦前後 | 月と太陽の方向が次第に直角へ近づく | 中潮から小潮 | 大潮を過ぎると潮差が徐々に小さくなる | |
| 下弦 | 左半分が明るい半月 | 地球から見て月と太陽の方向がほぼ直角になる | 小潮 | 満潮と干潮の差が小さくなりやすい |
| 下弦を過ぎた月から細い月 | 月と太陽の方向が再び近づく | 長潮・若潮を経て中潮 | 潮差が再び大きくなり、次の大潮へ向かう |
・潮回りについて
一般向けの潮見表やカレンダーでは、大潮と小潮の間を細かく分けた「中潮」「長潮」「若潮」という言葉も使われています。それぞれの意味は以下の通りです。
| 潮回り | 一般的な意味 |
| 大潮(おおしお) | 満潮と干潮の差が大きくなるころ |
| 中潮(なかしお) | 大潮と小潮の間にあたるころ |
| 小潮(こしお) | 満潮と干潮の差が小さくなるころ |
| 長潮(ながしお) | 小潮の末期で、潮位の変化が緩やかに見えるころ |
| 若潮(わかしお) | 長潮を過ぎ、潮差が再び大きくなり始めるころ |
潮回りは、一般に次の順序を繰り返します。
大潮 → 中潮 → 小潮 → 長潮 → 若潮 → 中潮 → 大潮
※潮回りの名称は月の巡りをもとにしたおおよその目安であり、各地点の実際の潮位をそのまま表すものではありません。
同じ大潮の日でも、満潮・干潮の時刻や潮位は地域によって異なり、「今日は大潮だから干潮時刻も全国で同じ」とはならないため、お出かけの際は目的地に近い地点の潮位表を確認する必要があります。
・新月・満月と大潮
新月のころは太陽・月・地球の順、満月のころは太陽・地球・月の順となり、どちらもほぼ一直線に並びます。
この配置では、月と太陽による起潮力の方向がそろい潮差が大きくなるため、「大潮」の時期となります。
大潮では一般に、満潮時の潮位が高くなり、干潮時の潮位が低くなるため、海面の上下が目立ちやすくなります。
ただし、朔や望を迎えた瞬間に各地が大潮になるわけではありません。海水が天体の動きにすぐ追従するわけではなく、日本付近では朔や望から一日ほど、場所によってはさらに時間を置いて潮差が大きくなることがあるのです。
・上弦・下弦と小潮
上弦と下弦のころは、地球から見た月と太陽の方向がほぼ直角になります。
月と太陽の起潮力が異なる方向に働くため、互いの作用を弱める形となり、満潮と干潮の差が小さくなるため、「小潮」の時期となります。
大潮と小潮は、朔から次の朔までの約29.5日の間におおむね二回ずつ現れます。
満潮・干潮の頻度や間隔と地域による違い

潮汐の発生に関するその他の内容を、まとめてご案内いたします。
- 満潮・干潮は1日に2回ずつ、交互に現れることが多い
月に近い側と反対側の2か所で海面が高くなるため、地球が自転すると、多くの場所で満潮と干潮を交互に2回ずつ迎えるというのが目安です。ただし、実際の間隔は均等とは限りません。地域や日によって、二回の満潮・干潮の時刻や高さには差が生じます。 - 満潮から干潮までの間隔は約6時間が目安
満潮から次の満潮までは平均約12時間25分です。その半分にあたる約6時間余りで、満潮と干潮が入れ替わる目安となります。 - 満潮・干潮の時刻は毎日少しずつ遅くなる
月も地球の周りを動いているため、満潮・干潮の時刻は平均すると前日より約50分ずつ遅れます。ただし、実際のずれ方は日や地域によって異なります。 - 満潮・干潮の時刻や潮位差には地域差がある
海岸線や湾の形、海底の深さ、海峡や湾口の広さ、島や半島の位置、外海からの経路などによって、潮の伝わり方は変わります。そのため、経度が近い同じ日でも地域ごとに満潮・干潮の時刻や潮位差が異なる場合があります。 - 有明海では潮位差が大きくなりやすい(潮位差の具体例)
有明海は福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県に囲まれた内海で、湾口から奥へ向かって細く浅くなる地形です。外海から入った海水が湾の奥へ進むにつれて狭い範囲に集まり、浅い海底の影響も受けて海面の上下が大きくなるため、場所や時期によっては満潮と干潮の差が約6メートルに達し、干潮時には広い干潟が現れます。
なぜ暦象年表に潮汐が掲載されている?
潮汐は海で起こる現象ですが、その基本となる周期は月や太陽の運行と深く結びついています。
国立天文台が公開する暦象年表には、国民の祝日、二十四節気、朔弦望、日の出入り、日食・月食、惑星現象などの天文資料とともに、東京の潮汐や各地潮時の平均改正数が掲載されています(潮汐の数値は、海上保安庁海洋情報部によるものです)。
暦は、季節や日付を示すだけのものではありません。
太陽や月などの天体がどのように動き、地上からどのように見えるかをまとめた資料でもあります。
潮汐もまた、天体の運行から生まれる周期的な現象であるため、暦に関する詳しい資料の中で扱われているのです。
かつて日本で用いられた暦は、月の満ち欠けが日付に反映されていたものでした。新月のころが月初めとなるため、現代のカレンダーよりも日付から月相を想像しやすかったと考えられます。
漁や船に関わる人々にとって、月の巡りは潮回りを考える手がかりの一つだったのでしょう。
とはいえ、昔も今も実際の潮の動きは、土地ごとの経験や観察と併せて捉えられてきたものなのです。
暦要項と暦象年表の違い
「暦要項」と「暦象年表」は名前が似ていますが、掲載される情報量と役割が異なります。
・暦要項に掲載される朔弦望
暦要項は、国立天文台が毎年2月に翌年分を発表する公式な暦の基礎資料で、主な掲載内容は次のとおりです。
国民の祝日・日曜表・二十四節気と雑節・朔弦望・日食と月食
朔弦望の欄では、新月・上弦・満月・下弦を迎える日付と時刻を確認できます。
・暦象年表に掲載される潮汐情報
暦象年表は、暦要項よりも幅広い天文現象や数値を収めたデータ集です。
東京の潮汐表には、日ごとの満潮・干潮の時刻と潮位が掲載されており、また「各地潮時の平均改正数」を用いると、東京の潮時を基準として各地のおおよその時刻を考えることができます。
ただし、改正数は平均的な値です。実際の満潮・干潮時刻は日によってずれるため、当日の予定を立てる場合は、気象庁や海上保安庁が公開する地点別の情報を利用するほうが目的に合います。
朔弦望と天文潮位はどのように関係する?
朔弦望を知ることは、新月・満月のころは大潮、上弦・下弦のころは小潮になりやすいといった潮の満ち引きの大きさを考える手がかりになります。
ただし、各地の満潮・干潮の時刻や海面の高さは、朔弦望だけから求められるわけではありません。実際には、その地点で長く観測してきた潮位のデータを分析し、月や太陽による複数の周期的な変化を組み合わせて予測します。
このように、月や太陽の影響によって起こる潮位の変化から予測された海面の高さを「天文潮位」と呼びます。全国各地の天文潮位は、気象庁の「潮位表」で確認できます。
一方、実際に観測された海面の高さは「実測潮位」と呼ばれ、風や気圧などの影響も受けるため、天文潮位と同じになるとは限りません。
気象庁の「潮汐観測資料」では、観測した潮位のデータを確認できます。また観測値は確認作業を経て翌月20日ごろに確定し、それ以前のデータは速報値として公開されます。
整理すると、次のようになります。
- 朔弦望:大潮・小潮の時期を知る手がかり
- 天文潮位:月や太陽の影響をもとに予測した海面の高さ
- 実測潮位:実際に観測された海面の高さ
朔弦望は潮回りを理解するための基礎ですが、潮位表に掲載される天文潮位は、朔弦望だけでなく、各地点の観測データや複数の周期的な変化をもとに求められているということです。
このような潮位の予測値や観測値は、海辺の観光や潮干狩りなどにも活用できます。このあとの章では、暮らしの中で使いやすい公式サイトをご紹介いたします。
潮の満ち引きがつくる海辺の風景と潟湖

満潮と干潮で姿を変える厳島神社
広島県廿日市(はつかいち)市の厳島神社は、潮の満ち引きによって風景が大きく変わる場所として有名ですよね。
満潮のころには社殿や大鳥居が海に浮かんでいるように見え、干潮になると海底が現れ、潮位などの条件が合えば大鳥居の近くまで歩けることがあります。
同じ場所でも、訪れる時刻によって海上の神社と干潟に立つ大鳥居という異なる景観を見られるのが大きな特徴です。
ただし、潮位だけでなく天候や現地の立ち入り案内も関係しますので、訪問前には、観光案内や神社周辺の情報と併せて確認しましょう。
江の島に道が現れるトンボロ現象
神奈川県藤沢市の江の島では、潮が大きく引いたとき、対岸との間に砂の道が現れることがあります。
このように、普段は海で隔てられている陸地と島が、砂州によってつながる現象は「トンボロ」と呼ばれ、日本語では「陸繫砂州(りくけいさす)」ともいわれています。
藤沢市は、江の島のトンボロを、干潮時に海から道が現れて離れていた陸地がつながる現象と説明していますが、常に現れるわけではなく、潮位が十分に下がる日や時間帯に限られます。
潮が満ち始めると道は再び海中へ戻ります。観察する場合は潮位表だけでなく、現地が発信する出現予想や通行案内も確認しておきたいところです。
潮干狩りと国内の代表的なスポット
潮干狩りは、潮が引いて現れた砂浜や干潟(ひがた)で、アサリやハマグリなどを採る春の代表的なレジャーです。
とはいえ、潮位が低くなる日であってもいつでも入場できるわけではありません。開催日や利用時間、採れる貝の種類、道具、持ち帰れる量は場所ごとに決められていますので、事前確認が必要です。
国内の主なスポットには、次のような場所があります。
- 千葉県の富津(ふっつ)海岸・木更津(きさらづ)周辺
東京湾東岸には複数の潮干狩り場があります。千葉県は毎年、県内の開催期間や料金、問い合わせ先を一覧で案内しています。漁業権が設定された海域では、指定された潮干狩り場を利用しましょう。 - 神奈川県横浜市の海の公園
横浜市内で唯一海水浴場を持つ公園で、約1キロメートルの人工砂浜があります。干潟にはアサリなどが生息し、潮干狩りでも親しまれています。採取量や貝の大きさ、使用できる道具には地域の決まりがあるため確認しておきましょう。 - 愛知県の三河湾沿岸
西尾市の西はず鳥羽海岸や東はず海岸、蒲郡(がまごおり)市の竹島海岸など、複数の潮干狩り場があります。開催日は潮回りによって異なるため、各漁業協同組合の潮見表を確認してから出かけるとよいでしょう。 - 兵庫県たつの市の新舞子(しんまいこ)海岸
遠浅の海岸で、干潮時には広い干潟が現れます。例年は春から初夏にかけて潮干狩りが行われますが、具体的な日程は年ごとに異なります。 - 熊本県の有明海沿岸
大きな潮差を持つ有明海では、広い干潟を利用したマテ貝掘りなどを体験できる地域があります。ただし、共同漁業権ごとに利用上の決まりがあるため、関係する漁業協同組合や主催者の案内を確認しておきましょう。
潮干狩り場の営業状況は、貝の生育状況や天候などによって変更される場合があります。一般的な潮位表に加え、施設や漁業協同組合が出している当年の開催表を見ることが重要になります。
干潟とは?仕組みと主な場所

干潟(ひがた)とは、干潮時に陸地となり、満潮時には海水に覆われる平らな砂泥地(さでいち)です。
川が運んできた砂や泥は、波の穏やかな湾内や河口付近にたまりやすくなり、そこに潮の満ち引きが繰り返されることで、満潮時には水没し、干潮時には広く現れる地形がつくられます。
環境省では、干潟を地形によって次のように分けています。
- 砂浜の前面などに形成される前浜(まえはま)干潟
- 川の河口部に形成される河口(かこう)干潟
- 潟湖の岸に沿って形成される潟湖(せきこ)干潟
干潟には貝類、カニ、ゴカイ類などが暮らし、それらを餌とする鳥も訪れます。海水と陸地が一日のうちに入れ替わる、潮汐ならではの環境です。
日本で知られる干潟
国内には大小さまざまな干潟があります。今回は、特徴の異なる三つの地域を挙げております。
- 有明海の干潟
日本を代表する広大な干潟で総面積は約200平方キロメートル、日本の干潟の約40パーセントを占めています。また約6メートルの大きな潮差(前述)によって湾奥を中心に泥干潟が現れ、ムツゴロウやシオマネキなど、有明海を象徴する生き物も知られています。 - 東京湾の三番瀬
千葉県船橋市や市川市の沖に広がる浅い海域と干潟です。都市部に近い場所にありながら、多くの生き物や渡り鳥が利用する環境が残されています。 - 名古屋港の藤前干潟
庄内川、新川、日光川の河口付近に広がる干潟です。渡り鳥の飛来地として知られ、ラムサール条約湿地に登録されています。
※干潟そのものを詳しく扱うと、生き物や漁業、渡り鳥などにも話題が広がります。潮汐の記事では、潮が引くことで海底が現れる代表的な地形としての内容にとどめます。
潮位変化のある湖:潟湖
潟湖(せきこ・ラグーン)とは、湾の入口付近に砂州などが発達し、海の一部が区切られてできた湖です。
海とのつながりが残っている潟湖では、湖口や水路を通じて海水が出入りするため、海水の混ざった淡水(汽水)になります。そのため、外海の潮汐が湖内の水位や流れにも影響します。
海との間に狭い水路がある場合、外海の潮が湖の奥まで伝わるには時間がかかります。湖口から遠くなるほど潮位変化が遅れたり、変化の幅が小さくなったりすることもあります。
- 浜名湖
静岡県にある潟湖で、今切口を通じて遠州灘(えんしゅうなだ)とつながっています。海水が湖内へ入り込む汽水湖で、湖口に近い場所ほど潮汐の影響が現れやすくなります。 - サロマ湖
北海道のオホーツク海沿岸にある日本最大の潟湖です。湖口を通じて外海とつながり、湖内には広いアマモ場が見られます。ホタテガイなどの生息・生産の場としても知られています。 - 宍道湖(しんじこ)と中海(なかうみ)
日本海から境水道、中海、大橋川、宍道湖という順につながっています。海水は中海を経て宍道湖方向へ入り、河川からは淡水が流れ込むため、場所によって塩分や水位変化の現れ方が異なります。
霞ヶ浦もかつて海の一部から形成された湖ですが、現在は常陸川水門などによって水位が管理されているため、海の潮汐による変化はこれらの汽水湖ほど目立ちません。
潮汐情報はどこで調べる?見方と活用法

潮位表でわかること
潮位表では、特定の地点における満潮・干潮の時刻と、そのときの潮位を調べることができます。
サイトやデータによっては、次の情報も掲載されています。
- 一時間ごとの予測潮位
- 潮位変化を示すグラフ
- 大潮・中潮・小潮などの潮回り
- 潮位を測る基準面
- 過去の観測値
- 予測値と観測値との差
なお、潮位表のほか「潮汐表」「潮見表」もあり似ていますが、使われる場面に少し違いがあります。
| 主な使われ方 | |
| 潮位表 | 潮位の予測値や観測値を示す公的資料など |
| 潮汐表 | 航海や港湾業務などで用いられる専門的な資料 |
| 潮見表 | 潮干狩り、釣り、観光などの一般向け案内 |
一般向けの潮見表には見やすいグラフが多い一方、数値の出典が明記されているかも確認しておきたいところです。
気象庁の潮位表で調べる
気象庁の「潮位表」では、全国各地の天文潮位を調べることができます。
地点と年月を選ぶと、次のような情報が表示されます。
- 毎時の予測潮位(表・グラフ)
- 満潮の時刻と潮位
- 干潮の時刻と潮位
- 日の出・日の入り
- 月の出・月の入り
- 月齢
旅行や潮干狩りの予定日を確認したい場合は、目的地に最も近い観測・予測地点を選びましょう。
また、昨日・今日・明日の実測潮位および天文潮位を確認する場合は潮位観測情報のページ、
近日の実測潮位を掲載する潮汐観測資料(速報値)のページもあります。
そのほか、気象庁には掲載地点一覧表から天文潮位と1~3日分の現在の観測値をグラフで見られる掲載地点一覧表潮位観測情報のページもあります。
予定日の見通しには潮位表、現在の状況を見る場合は潮位観測情報、過去や近日の実測記録を調べる場合は潮汐観測資料というように使い分けるとよいでしょう。
海上保安庁の潮汐推算で調べる
海上保安庁海洋情報部の「潮汐推算」では、地図から地点を選び、指定した日の満潮・干潮時刻や潮位を調べられます。
沿岸各地だけでなく、港や島、湖内など多くの推算地点が用意されている点が特徴です。
表示される潮位の基準は各地の最低水面であり、気象庁の潮位表と基準面が同じとは限らないため、異なるサイトの数値を比べる際には注意が必要です。
なお海上保安庁は、ウェブ上の潮汐推算について、航海目的では刊行物の「潮汐表」を使用するよう案内しています。
観光や散策の予定にはウェブの推算情報が役立ちますが、船の運航では目的に応じた業務用資料や現地の案内を用いる必要があります。
天文潮位と実際の海面には違いがある
潮位表に掲載される天文潮位は、月や太陽などによる周期的な変化をもとにした予測値です。
一方、実際に観測される海面は、天文潮位以外にも次のような影響を受けます。
- 気圧の変化
- 風向きと風の強さ
- 海流
- 河川から流れ込む水
- 波や湾内の揺れ
- 季節による海水温の変化
たとえば、低気圧の通過時には実際の潮位が天文潮位より高くなることがあり、高気圧のもとでは低くなる場合があります。気象庁は、観測した潮位と天文潮位との差を「潮位偏差」として扱っています。
つまり、潮位表は海面の動きを考える基準になりますが、当日の海が予測値どおりになるとは限りません。現地の施設案内、気象情報、海の状況と組み合わせて見ることで、より実際に近い様子を把握できるのです。
潮汐情報を事前に確認したい場面

満潮・干潮の時刻や潮位は、さまざまな海辺の活動に関係します。
- 潮干狩りや磯遊び
潮が引く時間帯には干潟や岩場が広く現れます。干潮時刻だけでなく、利用できる時間、採取区域、道具や採取量の決まりも確認しておきましょう。 - 海辺の観光や散策
厳島神社、江の島のトンボロ、干潮時に砂の道が現れる観光地などは、訪問時刻によって見られる風景が変わります。 - 写真撮影
水面に映る鳥居、干潟の模様、夕日と砂州など、潮位によって構図が大きく変化します。日の出・日の入りと潮位を併せて調べると、撮りたい景色を考えやすくなります。 - 船やカヌーなどの水上レジャー
潮位の低下によって水深が浅くなる場所がある一方、海峡や湖口では潮位差によって強い流れが生じることもあります。潮位だけでなく、潮流、風、波、現地事業者の案内も確認しておきましょう。
海辺の様子は、同じ場所でも数時間で変わります。出発時刻だけでなく、滞在中に満ち潮へ移るのか、引き潮へ移るのかまで見ておくと、行程を組み立てやすくなるでしょう。
月の形から潮の動きをどこまで推測できる?
夜空の月を見れば、潮回りのおおまかな段階を想像できます。
- 新月や満月に近い月なら、大潮に近い時期
- 半月に近い月なら、小潮に近い時期
- その間なら、中潮にあたる可能性がある
ただし、月の形だけで、目の前の海が満潮なのか干潮なのかは判断できません。
満潮・干潮の時刻は地域ごとに異なり、月相と潮差の最大・最小には時間のずれもあり、気圧や風などによって実際の海面も変化するからです。
月の形は潮の巡りを想像する手がかり、潮位表は特定の場所と時刻を調べる資料と考えると、両者の役割がわかりやすくなります。
まとめ

潮汐とは、月や太陽の引力によって海面が周期的に上下する現象です。海面が最も高くなった状態を満潮、最も低くなった状態を干潮と呼び、多くの沿岸では1日に2回ずつ交互に現れます。
今回の内容を振り返ってみましょう。
- 潮汐は、月や太陽が地球をわずかに引き伸ばすように働くことで起こる
- 月に近い側と反対側では海面が高くなって満潮となり、その中間では海面が低くなって干潮となる
- 満潮から干潮までは約6時間、満潮から次の満潮までは平均約12時間25分が目安
- 満潮・干潮の時刻は平均すると前日より約50分ずつ遅くなる
- 朔弦望とは、新月・上弦・満月・下弦という月の満ち欠けの節目を表す言葉
- 新月と満月のころは大潮、上弦と下弦のころは小潮になりやすい
- 暦要項には朔弦望、暦象年表には東京の潮汐や各地潮時の平均改正数が掲載されている
- 天文潮位は月や太陽の影響などをもとに予測した海面の高さ、実測潮位は実際に観測された高さ
- 満潮・干潮の時刻や潮位差は、湾の形や海底の深さなどによって地域ごとに異なる
- 潮の満ち引きは、厳島神社や江の島のトンボロ、干潟での潮干狩りなど、時間によって姿を変える風景をつくる
- 海とつながる潟湖にも、潮汐の影響が伝わる
- 気象庁の潮位表や海上保安庁の潮汐推算を利用すると、各地の満潮・干潮の時刻や潮位を調べられる
潮汐情報を事前に確認しておくと、潮干狩りや磯遊び、海辺の観光、写真撮影などの予定を立てる際に役立ちます。ただし、実際の海面は風や気圧などにも左右されるため、潮位表に加えて現地の案内や当日の情報も確認しておきましょう。
海から離れた場所で暮らしていると、潮の満ち引きは遠い現象のように思えるかもしれません。けれども、夜空に見える月と、海辺で繰り返される満潮・干潮は、月・地球・太陽の動きによってつながっています。
月の形は潮の巡りを想像する手がかりだと知りながら月を眺めると、趣もまた少し違って見えるのではないでしょうか。
